Virtual Interview with SOH BUNZOH about TARJEELING's Brand New Album "F1 Blues"(第9回)

2022年5月3日に発売されたTARJEELINGの新しいアルバム、「F1 Blues」。
一部ではキャリア最高傑作との声もある本作について語り尽くす連載企画、
「Virtual Interview with SOH BUNZOH about TARJEELING's Brand New Album "F1 Blues"」、
第9回はトラック10「Crazy Waltz」と、本作中最大の問題作とも言えるトラック11「Kill All Bubblies」を語り尽くします。
どうぞ!!

前回の内容はこちら↓
https://tagahillrecords.hatenablog.com/entry/2022/10/04/220341

TARJEELING 2022年ニューアルバム「F1 Blues」特集↓
https://tagahillrecords.hatenablog.com/archive/category/TARJEELING%202022%E5%B9%B4%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%A0%E3%80%8CF1%20Blues%E3%80%8D%E7%89%B9%E9%9B%86

火を噴かんばかりの激しい「The Brand New Elders!」のエンディングの後、フェイドインしてくるのはこれまたジングル的な小品、「Crazy Waltz」だ。3拍子なのは逆回転されたノイズループで、その上に鈴を鳴らしながらマントラじみた歌が繰り返されるという、かなりの異色作である。全体的にくぐもった音像なので歌詞が聞き取りにくいのだが(また、この曲は歌詞カードには「Instrumental」とクレジットされていて歌詞の記載はない)、「ニホンノオトナノオトコハシケイ」=「日本の大人の男は死刑」と歌っているように聞こえるのだが?
「ああ、そう受け取って頂いても構いませんよ」と聡は応じる。しかしそうなってくると、死刑制度に反対の立場を取っている自身の主張とこのフレーズは矛盾するのではないか?
「そうね、これは歌詞カードの隅に記載されている囲み文を参照してほしい。つまりこの曲は私の思った事を語っているというよりは、このアルバムの物語の中に出てくる『シュプレヒコール』の描写なんです。この国の主だった支配層であるヘテロセクシャルな成人男性の差別的な言動に対して抗議デモを行ってるようなイメージですね。そしてこの物語の主人公は、そのデモやシュプレヒコールには参加せず、彼らの横を通り過ぎていく。そんなイメージを音でスケッチしてみた、という感じです」
その次に来るのは本作中一番の大作であり、かつ問題作とも言える「Kill All Bubblies」だ。本作の他の楽曲、いやTARJEELINGのこれまでの作品のどの楽曲と比べても、この曲の大胆な実験性は図抜けている。恐れを知らぬと言ってもいいくらいだ―何せ7分半もの間、ヴォーカルが入る箇所は1/3もなく、またバックトラックの大半は原音をとどめないほど過剰に加工されたハイハットの回転するループとキーボードによる大き目のベース音のみ…スネアもバスドラもないと来ている!そして、ほとんど無音にも近い緊張感に満ちた静寂はラスト2分で、カオティック・コアをも彷彿とさせる凶悪なノイズ・ジャムに打ち破られ、クリスマス前の天神地下街から録られたという歳末商戦の売り子の声が空爆された後の自動音声みたいに同じ言葉を繰り返して終わる。まるで世界に対する悪意を虫眼鏡で一点に集中して発火させたかのような仕上がりだ。
「この曲のトラックを作り始めた最初はね、そこまで過激じゃなかったんですよ」と聡は笑う。「何て言うのかな、売れる前のTHE VERVE的なサウンドで(笑)、ちょっとBPM遅めのサイケデリックなダンス・ロックみたいな。そのアレンジで1回くらい講演もしたんですけど、あまりしっくり来なくて。で、あのエフェクトをかけたハイハットサウンドを偶然発見して、これのループに音を重ねようとしたんですけど、考えれば考えるほど、これはなるだけ音を重ねるべきではないのではという気がして来たんです。…当時朝の黙想や色々な支度をしながら聴いていたのが、能楽長唄、民謡といった所謂邦楽をかけるラジオ番組だったんですけど、能楽とかバックのサウンドが笛と鼓だけで、謡も別にハーモニーがあるわけでもなく一見単なるユニゾンみたいな、恐ろしくミニマムなサウンドですよね。勿論、いわゆるグルーヴ感のあるサウンドでは全くないのですが、単純にグルーヴのある/なしでは測れない面白さを感じて。こういう事が自分も出来ないかな、と思ってトラックを模索していきました」
タイトルについては、かねてからコラムなどで聡自身がPrimal ScreamやHave a Nice Day!からの影響を公言してきていた。しかしこの曲、そして歌詞から受ける印象は「Kill All Hippies」とも「Kill All Internet」とも大きく異なる。

Kill All Hippies/Primal Scream


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Kill All Internet/Have a Nice Day!


www.youtube.com


(当時の)最新型のレベルミダンスュージックを作ったPrimal Screamやエレクトロポップパンクとも言うべき独特の軽みと祝祭感と空虚さを表現したHave a Nice Dayに比べ、ビートがほぼない分、致死量の怨恨といったものを感じさせる。のだが、それとは相反するような―ユーモアと呼ぶにはあまりにも意図がつかみにくいものではあるが―言葉や構成も散見される。例えば、時折差し挟まれる「ない」を「ニャい」に変えた言い回しや、エンディングの(内容についてはWebでの公表を控えるように聡から言明されたのでここで紹介するわけにはいかないのだが)つぶやきなどがそうだ。このへんてこな組み合わせは何なのだろうか?
「うん、まあ単純に言ってる事がきつ過ぎるからそういう事で緩和しようというのはありますよ」と苦笑しつつ聡は続ける。「あと最後のフレーズに関しては、何せ7分半もある、しかも起伏というものがほとんどないトラックでしょう?これ人によってはすごく退屈な構成なんですよ(笑)。なので、こちらの方からそう感じた人が言いそうな言葉を先回りして言ってみた、という感じなんです(笑)。ただ取りようによっては、とても陰惨な響きを持つ言葉にもなり得るかもしれませんね…。まあその辺は、聴いた人の想像にお任せしますよ」
(続く)

聡文三音楽活動30周年記念作品、
TARJEELING 6th Album 「F1 Blues」(品番:THCD-010)、
2022年5月3日発売!!!
全14トラック、2000円(税抜)。
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取扱店舗(2022年10月現在)
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