こんにちは、TARJEELINGの聡文三です。
いよいよ発売があとひと月ちょっとに迫ってきたニューアルバム「Daily Colony News」。
その発売を記念して、今日から「Daily Colony News」の特集記事を連載しようと思っています。
題して「架空インタビュー “Talking ‘bout D.C.N.”」。
そう、アルバムに関する色々な事について、自分で自分にインタビューするという形で綴ってみようと思います（笑）。
それでは第1回、どうぞご笑覧ください。
―前作「TWILIGHT HOPE」から4年近く経ちましたが、今回のアルバムの制作に取り掛かったのはいつ位からですか。
聡：「TWILIGHT HOPE」を2011年の9月に出してから、しばらくはツアーと、あと世界激場（聡とシンガーソングライター、みねまいこが中心になって行っていた音楽、講演、読書会などを複合させたイヴェント）のファイナルの準備と開催に追われてて。で、2013年の頭くらいから、ボチボチ新しい音を録り始めていたんですが、当初はアルバムにするとかそういう事は特に考えずに、とにかくトラックを作ろうと。今の形態ですと、ライヴの際にバックトラックが必要なケースも多いので、ライヴ対策がてらという事もあって（笑）。アルバムにするべきだと思ったのは、取り掛かってから1年くらいたった時ですかね。
―今回は「架空の植民地で放送されるラジオ番組が伝えるニュース」という、一風変わったコンセプトで作られたそうですが、これはどこから？
聡：さっきも言ったように、もともとアルバムを作るつもりではなかったので、当初はコンセプトもへったくれもなかったんですね。ただ、―今回は曲を作るのと録音するのをほぼ同時進行で作っていったんですが―出てくる曲というのが、今の世の中で起こっている事や、自分の周りで起こった事を大なり小なり反映した曲が多かったんですね。なので、アルバムという形にすると決めた時に、そういう曲ばかりである事の方便というか（笑）、統一感を持たせるものを探してたんです。で、昔自分が「ポーチソングス」という名義でリリースした「植民地だより」という曲があったのを思い出して」
―（笑）。
聡：（笑）その曲ではお手紙という意味の「だより」だったんだけど、新聞やニュースにも使われる言い回しでもあるし、英語に意訳したらなかなかハマったので、これで行こうかと。
―ちなみにその曲は今回のアルバムには使われていないんですか？
聡：断片を編集して一部使っています。
―「植民地」というのは、今のこの国のメタファーなのでしょうか。
聡：それを意識しなかったとは言いません。この国とアメリカとの関係を見ると、果たして独立国家の体をなしてるのか？とも思いますし、実際いわゆる「論客」と言われる人たちの間で、そういう指摘をストレートにしてくる人も増えてきましたしね。ただ…1曲1曲に関しては、そうした事に関して言及しているわけではないのです。むしろそんな場所にいる人達に起きる様々な出来事や想いを、自分の主張を抑えてスケッチを取るように書いた曲が多い。
―ただそうした曲でも、人によってはあなたの主観や主張を見て取るでしょうね。
聡：それは仕方がないんじゃないですかね。同じ事象を観察してスケッチしても、視点が違えばどこを中心に置くかは変わってくるでしょう。仮に―あり得ることだと思うのですが―このアルバムでの描き方が左翼的だとかいう批判があったとしても、別に僕はどうとも思わないし、「勝手に言わせとけ」って感じです。逆にそういうレッテルを貼ることで何かを指摘した気になっている態度のほうが不誠実な気が僕はします。
―それにしても、定額制の音楽配信サービスまで始まってしまった昨今、こうした「1枚通して聴く事に意味があるコンセプトアルバム」というのは随分古めかしいアイディアだとは思いませんでした？
聡：いや、逆に今のこのご時世、わざわざ盤として作るのならここまでしないと意味がないと思いました。しばらく前に、七尾旅人さんが戯曲みたいな構成の3枚組のアルバムを出したでしょう（2007年リリースの「911 FANTASIA」）。あれなんかとても評判が良かったですよね、もちろんあれから結構時間がたってますから、今同じ事をやっても評価されるかどうかはわかりませんけど。…でも確かに、ああいう勇敢な事をやる人は今あまりいませんよね。3枚組というのもそうだけど、今世界で起きている事と切り結ぼうとする作品を作っている人は。
―自分の作品もそういうものだと思っていますか？
聡：う～ん、そうだったらいいなとは思います（笑）。実際にどうかというのは、やはり聴いてる人が感じることだから。
（第2回へつづく）
＝TARJEELING 講演 来週です！＝
