2015年総括の自撮りインタヴュー

 こんにちは、TARJEELINEGの聡文三です。
 2015年も本日で終了でございます。
 皆様方には今年1年も、本当にお世話になりました。
 毎年恒例の1年の総括ですが、今回は自撮りインタヴューという形式で語ろうと思っています。
 それではどうぞ。

○アルバム「Daily Colony News」リリースについて

―今年のニュースと言えば何といっても4年ぶりのスタジオアルバム(註:ライヴ盤では2012年にウェブ上でフリーリリースされた「Live Conference Vol.1」https://soundcloud.com/tagahillrecords/liveconferencevol1 がある)「Daily Colony News」がリリースされましたhttp://blogs.yahoo.co.jp/tagahillrecords/folder/565070.html が、今あのアルバムを振り返ってどんな感じを受けますか?

聡「いや、まだリリースから半年もたっていないですし、いまだプロモーションの真っ最中ですから(笑)、そこまで客観的には振り返れないんですけど。ただ私の中では最高傑作を創った、という気持ちに変わりはないですね」

―リリース後の周囲からの評判はいかがでしたか?

聡「お陰様で何人かの方からは、大変身に余る評価を頂きました。あと嬉しかったのは、講演で初めて一緒になった若いバンドやミュージシャン、聴講生の方で、大変気に入って下さった方が何人も出てきたこと。特に世代の違う方にアピールする要素があるとは思ってなかったので、これは嬉しい誤算でした。ただ、自分としてはまだまだ多くの方に届いてほしいアルバムだと思っていますし、届くとも思っていますが」

―キャッチコピーに「2015年のこの国の状況にピシャッと対応したアルバム」とありましたけど、やはりそういった事もいつになく若い方に届いた理由だと思いますか?

聡「どうでしょう?若い人はそういう理屈ではあまり反応しないと思うんですよ。音楽自体の持っているフィーリングとか、パフォーマンスの内容がなんか他の人とは違うトンチキな感じがするよとか(笑)、そういう所で何となく読み取ってくれたのではないかと思うのですが」

―一方で、まだ「届いていない」人に対しては、今後どう攻勢をしかけていくつもりですか?

聡「勿論来年もすでに何本か講演が入っていますし、まだ詳しくは言えませんがとあるコラボレーションの計画もあります。また、講演以外でもいろんな形でプロモーションをかけていかなくては、と思っています。昨年は講演とアルバムのパッケージ作り(註:「Daily Colony News」のパッケージはすべて手作りで行われるので、作成に時間がかかる)にかまけてあまりそこが出来なかったので、それは反省しているんです」

○2015年のこの国の状況について

―さてそのアルバムキャッチコピーにもありました「2015年のこの国の状況」についてですが、今年は戦後70年の年であり、また安保法案が成立した年でもありました。SEALDsなどの動きもありましたが、結局は現政権の思いのままになったという感が強いですね。

聡「おっしゃる通り、法案は可決されてしまいましたし、あれだけ民意を無視した事を行い、またアベノミクスの失敗がほぼ決定的になった現状でも政権の支持率はそれほど下がっていない。表面だけ見るとその通りですね」

―という事は、言われているほど絶望的な状況ではないと?

聡「いや、一面では絶望的な状況であることには変わりはないですよ。ただ、いわゆる従来の国政をベースに見た状況では絶望的に見えても、そこから外れたところに希望を見出すことはできる。さっきSEALDsの話が出ましたが、彼らが訴えた安保法制の反対というのは叶いませんでしたが、彼らがやった事は今までの日本における名ばかりの民主主義とは違った形での民主主義の道を拓いたかもしれない。それが何年かした後に、現時点での敗北を帳消しにするくらいの成果をもたらす、という事はあり得るわけでしょ」

―では、現状をそれほど悲観しなくてもいいと?

聡「まあ悲観しないとは言っても、今言ったような希望の種のようなものが潰えてしまわないようにしないといけないので別に楽観していいわけでもないのですが。そういう意味では、やはり安倍政権には一刻も早くご退場していただく必要があるし、その為の努力をしなくていいわけではないです」

ルサンチマンと知識と祭りについて

―ただ、いわゆるネトウヨ的な人々や、この国のマジョリティを自認するような人たちは必ずしもそう考えていないですよね。彼らはこの状況を支持したり、あるいは支持しないまでも経済がよければ容認したり、あるいは単純に無関心だったりする。

聡「まず言っておきたいのは、彼ら一人一人を一括りにする事は出来ないですよね。ネトウヨだって、普通の勤め人だって一人一人人生観や価値観はそれぞれ違うのですから。ただ、現実でもネットでもここしばらく色んな人の言動を観察してきて、今後この方向性はマズい、逆にこの考え方はいい、というのはぼんやり分かってきましたけど」

―それはどういう?

聡「第一には、ルサンチマンに立脚して物事を考えるべきではないという事。そして、知識を羅列するだけの人にはもう存在価値がないという事。これは要するに自分でクリエイトしたものを見せないとダメだという事です、別に音楽やアートに限らず。最後に、ハレよりケ、祭りの狂騒より日常の静穏がより尊重されるべきだという事。祭りというのは何もイヴェント事に限った話ではありません。今の資本主義のありようだって、ある意味では祭りを繰り返しているようなものだしね」

―なるほど。

聡「この3つの考えについては自分でもまだ論理的な説明ができるほどこなれていないので今日は突っ込んで言いませんけど。でも大体、ああこれダメだなと思う人や現象は、今あげた3つのどれかに引っかかってますね。これは政治的な姿勢がどうとか、音楽的な方向性がこうとかいうのとは別の話です」

○去りゆく者たち

―今年は、各ジャンルの戦後を代表する巨人ともいえる人たちが相次いで亡くなった年でもありました。水木しげる原節子は記憶に新しいところですし、あなたが「クレイジーリラルボーイ」で取り上げた鶴見俊輔もアルバム発売前に亡くなって。

聡「確かに今年は、象徴的な人が多く亡くなった年でもある。ただ個人的には、うちに長年いた猫のチッタが9月に亡くなった事が一番大きい。13年もの間、とても愉快な気持ちにさせてくれた存在だったから」

―その事について少しお話ししますか。

聡「プライヴェートな事なのでわずかにとどめますが、長年一緒にいて、『可愛い』『面白い』『いいキャラ』とか思う事は沢山あったのですが、亡くなる間際に彼が死と闘う姿を見たら、彼に対する尊敬の念が非常に湧いてきました。彼に対してそういう感情を抱くことはあまりなかったので、自分でも驚きました。またそれをきっかけに、死と生命について少し考えました。そうした意味でも彼がもたらしてくれたものは大きい」

―鶴見さんについては、「クレイジーリラルボーイ」へのコメントhttp://blogs.yahoo.co.jp/tagahillrecords/17815769.html でも語っていましたが。

聡「最近になって、追悼出版などで最晩年の発言や文章を読む機会があったんですけど、ご本人はさんざん耄碌した耄碌したっつってましたけど(笑)、ホント亡くなる直前まで基本ラインはぶれなかったんだなという事を改めて感じました…。鶴見さん以外にも、おっしゃったように大きな存在が沢山亡くなりましたね、特にこれからのこの国を考える上でも。残念である一方、『いい加減お前ら自分の力でちゃんとせい』という事なのかな、とも思います」

○2016年の展望

―最後に、来年の展望について語っていただけますか。

聡「展望というよりは願望ですが(笑)、さっき申し上げた3つの事を少しでも実践できる人生になったらいいと思っています。また世の中がそういう風になったらいいとも思っています」

―TARJEELINGとしては?

聡「もちろんアルバムを売りたいですけどね(笑)。ただ、自分のアルバムが売れるのも大事ですけど、私としては色んなバンドやミュージシャンが、これを聴いて面白がって、自分でもいろんなトライアルをしてくれるようになったらいいと思ってます」

―ほう。

聡「2008年に世界激場http://sekaigekijou.jugem.jp/?pid=1 をやった時、音楽ファンじゃないけど社会問題に関心のある方からはそれなりのフィードバックがあった。ただ、いわゆるバンドシーンの人たちからはほとんどリアクションがなかった。その後も読書会とか、色んな試みをやってはいたんだけど相変わらずだったし、彼らからの独自の動きもなかった。で3.11の直後にその時社会的な事に何の関心もなかったバンドマンが突如色々言い始めて、その時思ったさ。『いや、今まで君たちは何をしていたんだ?』と」

―はははは。遅ぇよ!と。

聡「まあ遅くても関心を持ち始めたのはいいことだけど、結局それもすぐに鎮静化してしまった。そして2015年になってもその状況は相変わらずだ。もうそろそろ、動き出してほしいんですけどね、彼等にも」

 ※今年1年、タガヒルレコーヅをご愛顧いただいた皆様、誠にありがとうございました!!来年もどうぞごひいきに、よろしくお願いいたします。