「Daily Colony News」発売記念連載「自録りインタビュー “Talking ‘bout D.C.N.”」第6回「(ほぼ)全曲解説“TELL ME"」

 みなさんこんにちは、聡文三です。
 自録りインタビュー“Talking ‘bout D.C.N.”、ほぼ全曲解説もアルバムの中盤に差し掛かってきました。
 第6回はアルバムの5トラック目、「TELL ME(商工会議所におけるフリードリヒ・エンゲルス)」についてです。どうぞ。

―「TELL ME」についてですが、音楽的にはいわゆる四つ打ちのダンストラックですが、これはいわゆるEDMとかを意識したんですか(笑)。

聡:違います(笑)。というか、架空のクラブでの描写を歌詞で行っているので、「クラブ=ダンスミュージック=四つ打ち」という非常にベタな連想から(笑)この曲調を思いついたのです。

―アコースティックセットでの講演では、この曲を全く違ったアレンジ―というかメロディから変えてますけど―で演奏していますが、ひょっとしてそのヴァージョンが先だったんですか。

聡:いや、あくまで思いついたのは本作に収録されているアレンジが先です。アコギのアレンジは、ちょっとした遊び心でやってみたら割とうまくいったという感じで。まああのヴァージョンも気に入っているので、いつか音源化してみたいですけど。

―アルバム制作当初は、こうした曲調をメインに据えた構想だったとも聞きましたが。

聡:こういう曲調というか、いわゆるAメロ→Bメロ→サビの展開があります、割とハッキリしたコード進行がありますみたいな、通常のポップソングの常套手段とは異なったやり方で作ってみたいとは思っていましたね。曲作り一つとっても、ギター弾いて作るというよりはいきなりリズムトラックから作るとか。やっているうちに従来的なやり方もかなり取り入れて作るようにはなりました。

―歌詞に出てくるエンゲルスというのは、カール・マルクスの盟友のエンゲルスだと思うのですが、ただマルクスファーストネームがリチャードになっていますね。これはどうして?

聡:僕が高校生の頃、リチャード・マークスというAOR系のシンガーが人気があったんですね。英語のスペルがRICHARD MARXですから、姓のスペルはあのマルクスと同じというか、英語読みなんです。当時それを発見して、面白いなと思ってたのを思い出してわざとここを変更しました。

―その心は?

聡:何年か前、誰かのインタヴューで読んだんですが、それによると、例えばアカデミー賞の授賞式とかで、映画の主題歌を披露するコーナーなんかの時、諸般の事情でオリジナルの歌手が歌えない時なんかに代役要員としてよくリチャード・マークスが使われるらしい(笑)。だから「歌えないリチャード・マークス(マルクス)」というのは、何の存在意義もない人のメタファーなんです(註:本人の名誉のために付け加えると、近年のリチャード・マークス氏はプロデューサー/ソングライター業でも成功しているとの事)。

―(笑)。歌詞全体としては、音楽シーンというかインディシーン批判のようなものですか。

聡:紙屋高雪さんのサイトで知ったんですがhttp://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/marx-int6.htmlエンゲルスというのは実際にお金持ちの息子で、父親の工場を継いで経営者をやってるんですね。で、昼間はそれこそ商工会議所に出入りするような(笑)ブルジョワ階級とも上手くやって、夜は革命運動に精を出してマルクスに稼いだ金を送っていたという。その話を読んだ時に、音楽シーンにもそういう両面的な人物がいたら面白かろうと妄想してこういう歌詞にしたんです。

―じゃあ特にシーン批判とかではない、と?

聡:そうだな…、こう言っておきましょうか。既存のシーンに対する反逆から始めた者も、それが支持を得て成功すると商工会議所に出入りして、かつての敵とそっくりな振る舞いをするようになる。そんな連中には、エンゲルスのような人間が必要なんだ(笑)。
(続く)

TELL ME(商工会議所におけるフリードリヒ・エンゲルス)
作詞・作曲:聡文三

場末のクラブはまるで商工会議所のよう
奥のソファーではお歴々が音楽聴かずに談合ばかり
君の役割はさしずめフリードリヒ・エンゲルスといったところ
連中の話に微笑んでは次の計画を残さず喋らせる

TELL ME―今度はどこに狙いをつけているの?
TELL ME―誰と誰と誰を取り込むつもりなの?
TELL ME―いつから、どこまで、どんな風に搾取するの?
TELL ME―そして最後には何が残るっていうの?

昼間のオフィスで俺は電子雑役夫の職を得た
田舎生まれの貧困育ちにゃ感性なんて高嶺の花さ、OK BABY?
俺の現在は歌えないリチャード・マルクスといったところ
Late 80’Sから始まったMy Taste of Music…Oh、首吊りもの(笑)

TELL ME―クールになれる資格はどこで取れるの?
TELL ME―「趣味の悪さ」は永久に背負う原罪なの?
TELL ME―努力の跡を感じさせる時点でもうダメなの?
TELL ME―そして結局は「ただのレジャー」で片付いて終わるの?

TELL ME―今度はどこに狙いをつけているの?
TELL ME―誰と誰と誰を葬るつもりなの?
TELL ME―いつから、どこまで、どんな風に改ざんするの?
TELL ME―そして結局、誰のための「祭り」なの?

次回は「愛と希望」についてお話しします。


=TARJEELING 8月講演=
日時:8/21(金)20時30分開演
会場:cafe and bar gigi   
料金:投げ銭制(要オーダー)
出演:TARJEELING/マーヤとセーラーゾンビ/赤い靴/麻由

=TARJEELING 9月講演=
日時:9/11(金)20時30分開演
料金:投げ銭とドリンク注文
映画上映:「ハートに火をつけて 最終版」(脚本監督 伊藤康弘 音楽 シーナ&ザ・ロケッツ Darkside Mirrors)
LIVE ACT:TARJEELING/藤田信也

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