TARJEELING ニューアルバム「Daily Colony News」発売記念連載「自録りインタビュー “Talking ‘bout D.C.N.”」第7回「(ほぼ)全曲解説“愛と希望”」

 みなさんこんにちは、聡文三です。
 自録りインタビュー“Talking ‘bout D.C.N.”、ほぼ全曲解説もアルバムの中盤に差し掛かってきました。
 第6回はアルバムの6トラック目、「愛と希望」についてです。どうぞ。

―続く「愛と希望」は、デモのSEをバックにアカペラで始まり、そこからいわゆるファンクなインストゥルメンタルになだれ込んだかと思うと、様々なSEが矢継ぎ早に出てくるパートあり、最後に美しいコーラスワークで「希望はジェノサイド」というフレーズを繰り返したりといった、アルバム中最も手が込んで、かつ不穏なトラックと言えると思うのですが。そもそも「希望はジェノサイド」なんて物騒なフレーズ、どうして思いついたんですか?

聡:これも例によって当初思いついていたのは基本的なリズムというか、グルーヴ感だけで。確か2012年頃の冬だったと思うけど、基本的なグルーヴを頭の中でループさせながら自転車に乗っていたら、何をどう間違ったかあのエンディングのメロディーと言葉が同時に出てきた(笑)。その頃は既に次のアルバムについて考え始めていた頃だったので、単独で1曲として考えるよりも、アルバム全体を構成するパーツとして―今回のコンセプトで言ったら、植民地で起こったある場面を表現するツールとして―使えるかもしれないとは思っていました。いざレコーディングに取り掛かった際には、ファンクのパートがなかなかうまくいかなくて、ピアノのリフを思いついてやっと軌道に乗ったという感じでした。

―では、あのフレーズは特に実際の出来事にインスパイアされて浮かんだものではないと?

聡:はい。人によっては「31歳フリーター。 希望は、戦争。」(2006年、ライターの赤木智弘氏が「論座」誌に掲載した文「『丸山眞男』をひっぱたきたい 31歳フリーター。 希望は、戦争。」の事。旧来的な左翼論壇を挑発的に批判したこの議論は、当時の論壇にセンセーションを巻き起こした)を連想したり、オウム真理教の事ではないかと思ったり、昨今のヘイトスピーチの影響を勘ぐったりするかもしれませんが、少なくとも意図的なものでは全くないです。

―じゃああのフレーズを考えた時、どんな風景が頭の中に浮かんでいたんでしょう?

聡:うーん…、強いて言うなら、戯曲の一場面みたいなものを連想していました。不穏な事件が多発するような場面で、舞台の後ろに控えている合唱隊かなんかが(笑)、あのフレーズを連呼し続けて、暗転、みたいな。アルバムの中でもそういう位置づけとして意図しています。だから曲順も、ちょうど真ん中のところに置いたしね。

―そういう、いわゆるポップソングの一つでもない、SE的なインストでもない形で曲を作るのって、今回がほとんど初めてではないですか?

聡:そうですね。ひょっとしたら、こういう曲を書こうと思ったのは、カール・クラウスについての本を読んだのも大きいかもしれない。

カール・クラウス。あの『人類最期の日々』の、ですか(カール・クラウスは19世紀末~20世紀初頭にかけてウイーンで活躍した反骨のジャーナリスト。『人類最期の日々』は第一次世界大戦を題材にした戯曲で、戦時中に実際にあった記事のフレーズや人々の発言を用いて物語を構成するその手法は、現在のインターネットにおけるコピー&ペーストの元祖とも言える)。

聡:ええ、実際のところは僕はクラウスについては色んな人の引用以外ではちゃんと著作を読んだことがないし、『人類最期の日々』にしたってごくごくわずかな場面しか知らないんですが(註:『人類最期の日々』は恐ろしく長大な戯曲で、「火星の劇場でもないと上演は不可能」とクラウス本人が語っているほど)、それでも、―人の著作を通して、ですが―クラウスがあの時代にやった事について知って、とてもカッコいいと思ったんです。姿勢だけでなく、やり方も。そもそも今回の「架空の地域におけるジャーナリズム」というアルバムのコンセプトも、ひょっとしたらクラウスの事が無意識にあったかもしれないですね。さっきの「希望はジェノサイド」にしたって、『人類最期の日々』に出てくる言葉の不穏当さに比べたらちゃんちゃら大人しいと思いますよ(笑)。
(続く)

愛と希望
作詞・作曲:聡文三

口車に乗せられて
あなたを愛してしまった

希望はジェノサイド
希望はジェノサイド…


次回は「亜偏屈」についてお話しします。


=TARJEELING 8月講演 2Days=
日時:8/21(金)20時30分開演
料金:投げ銭制(要オーダー)
出演:TARJEELING/マーヤとセーラーゾンビ/赤い靴/麻由

「住吉ウイークエンダー」
日時:2015年8月22日(土)開場19:30 開演20:00
料金:投げ銭制(要オーダー)
出演:TARJEELING/幻一郎/宿六屋ゆーすけ

=TARJEELING 9月講演=
日時:9/11(金)20時30分開演
会場 JUKE JOINT
料金:投げ銭とドリンク注文
映画上映:「ハートに火をつけて 最終版」(脚本監督 伊藤康弘 音楽 シーナ&ザ・ロケッツ Darkside Mirrors)
LIVE ACT:TARJEELING/藤田信也

どちらもご予約、お問い合わせはメッセージをどうぞ!!メール、twittermixiいずれからでもOKです!!