健全な構図

 絶好の行楽日和だった昨日。
 赤坂はけやき通りにて催された、ブックオカ の目玉イベント、「一箱古本市」に出かけた。
 このイヴェントは文字どおり、けやき通りの歩道の路上に参加者が段ボール箱に入れた古本を持ち寄り、そこで市を行うというもの。早い話が「古本のフリマ」である。
 私はこの催しに赴いたのは始めてである。
 「赤坂のけやき通り」と開催地を聞いていたので、てっきりけやき通りの一部分を使って十数件の店舗が固まってやっているものだろうと思っていたが、
 驚いた。通りのほぼ端から端までを使って市が開かれている。
 もっともほとんどの店舗は北側の歩道に集中しているのだけど(けやき通りは東西を横切っている)、それにしてもこんなに大規模に展開しているとは夢にも思わなかった。
 私は東→西に歩いたのだけれど、所々店舗が途切れる地点があって「あ、ここで市終わりかな?」と思っていても少し歩き続けると「…またあったよ!」みたいな事の繰り返しで(笑)、これだけでかなり圧巻というか楽しいというか。

 見ていると、店を構えているのは「古本の玄人さん」だけではなく、他ジャンルの人がやってるもの(雑貨屋さんとか教会とか、自転車サークルの店まであった)、文学サークルが自分達の同人誌と並べて売ってるもの(笑)、家に眠ってた本集めて家族で参加してみました的なもの、他県からの参加者、果ては「西日本新聞」のこども記者さん(当然小学生です)が体験取材みたいなノリでやってるもの、など非っ常に多岐にわたっている。
 「玄人さんの店」が少ないので、まあ掘り出し物とかが沢山あるわけでは、当然ない。そういう意味ではいわゆる「古本マニア」なんかには物足りないだろう。
 ただ、これだけ沢山の店が並んでいるとそれだけで「いろいろ見て歩く」楽しみがあるし、何より路上で行われているのでデパートの催事場で行われるような「古書市」と違った開放的な雰囲気があるのがいい(天気もよかったしね)。歩道という事で、元々道路沿いに建っているお店(カフェとかコンビニとかね)のお客さんも古本市目当てのお客さんと入り混じり、ちょっとした祝祭的な空気すら漂っている(天気もよかったしね)。おまけに時折チンドン屋よろしく、3人編成の楽隊やリコーダーのデュオまで出てきて演奏しては場を盛り上げているではないか。
 いやはや、大したものである。よくぞこんなユニークで面白い企画を実行できたものだ。すっかり楽しんでしまい、文庫本を10冊も買ってしまった(それでも合計1000円ちょっとですが)。

 この日どの位集客や売上があって、とかそういう事は当然私には分からないんだけど、
 昨日行ってみて強く思ったのは、「何だ、ちゃんと本好きな人、いるんじゃん」という事。
 そりゃ福岡市の人口から較べたらこの日集まった人の数なんて微々たるもんなんだけど、例えば「今若者は活字離れが進んでいて、ネットや電子書籍の普及により紙の本が衰退して…」みたいな話は、「ホントかよ?」みたいにしか思えなかったな。
 で、きちんと本に愛情のある企画者が、それが見える企画を立てて、ある程度開かれた雰囲気を作って実行すれば、ちゃんとそれを求めている人が集まるんですよ。すごく健全な構図だと思う。
 音楽者としてはいろいろ見習う所が多いと思う。色んな意味で。