若者論(笑)

 今年になって、私の職場に新しい人が多く入った。
 新卒採用なので、当然の事若い。22~3前後、もっと若い人もいる。
 私はもう若者をリタイヤして早何年なので(笑)、下の世代が(職場にもインディー音楽の現場にも)入ってくるのを数限りなく見てきているが、数年前から何となく若者のテイストが変わってきているように思う。
 あくまで感覚的にそう思うというレベルなので具体的にどうこうと言うのはなかなか難しいし、私が見た限りの事で若者の全てについて当てはまるなどとはもちろん思っていないのだが、それでも思う。特に今年は。
 とか何とか言うと「今の若者はなっとらぁん!」などと私が故・細川隆元(おぼえてますか?)化するのを期待する向きもあるかと思うが、実際は逆。ざっくり言えば、今の若者って、結構面白くなってきてない?という感じ。
 
 一つ思うのは、新しい分野に挑戦したり、人と知り合ったりするのに当たって、躊躇するとか物怖じするとか屈託とかいうのがいい意味でないなという気がする。
 若者ってそういうもんじゃないのという意見もあるだろうけど、自分が若者の頃を振り返っても、実はそんな事はないんだよね(笑)。子供と違って若者は、半端に知識を持ってる反面経験とか自信とかはそこに見合ってなかったりするものなので、結構そういう事に対しては衒うし、変な先入観を実は持ちやすいものだと思う。
 私が接した限りでは、数年前やもっと前、遥かに遡って私が若者だった頃(笑)に比べても今の若者はそういうハードルは低くなっていると思う。
 もっともひょっとしたらこれは、単に若者の子供化が進んでいるだけかもしれない。そういう事なら一概に良いとは言えないが(笑)、少なくとも伸びしろ、という意味ではいい事だと思うし、第一接してて気持ちがいい。
 
 今の若者面白いね、と感じてるオッサンやジイサンというのは意外に多いのかもしれない。
 こないだSIGHTという雑誌を読んでて、高橋源一郎内田樹の名物対談の中で若い世代の可能性についてのコメントがあるのを見つけた。
 私なりに要約すると「今の30代~40代は上の世代に対して『お前たちが日本をダメにした!』と罵倒し続けているけど、恐らく20代はそういう物言い自体にうんざりしている。そんな事するヒマがあったら自分のできる事を始める、という人が登場してきているのではないか。我々年寄りのすべき事は、そういう若者が出てきたらやんやと喝采してあげる事」という感じだった。
 なるほどねえ。それを所謂「上の世代」が言うのもどうなんだ、という気がするけど(笑)、世代論として一理あるとは思う。
 また、先日も知り合い(同世代)がtwitterで、もう日本の将来は貨幣経済にまみれた俺等世代や年寄りどもなんかじゃなくて、十代の連中に真剣に考えてもらうしかない、俺らはそいつらが困った時に相談に乗ってやればいいんじゃね?みたいな事を言ってて、それ自体は乱暴な意見かもしれないけど、妙に納得したのを覚えている。
 まあ確かにね、上の世代はどうか知らんけど、少なくとも我々世代というのは、もうあんまり望みがないと思うのね(笑)。残り時間という意味でも、内面や思想の貧しさという意味でも。
 それこそこの世代っていわゆる団塊世代に対して「お前らが社会をダメにしたせいで俺たちは…」的な呪詛をよく吐いてたりするけど、でももうそういう連中も選挙権を持って早20年だからね。世の中がダメになっていくのを人のせいにばかりできる歳でもないのよ、いい加減。
 それなのにそういう事を未だにやってる時点でもう全然ダメだと思うんだけど(笑)、同じダメでもちょっとは後続の者の邪魔にならんようにはせんといかんなあと思う。
 
 そう言えば前twitterでもちょこっと書いたけど、ジョン・レノンの曲に「マザー」ってあるでしょう。
 私も何度となく聴いた曲だけど、最近は前とはまたちょっと違う感じで好きなのね。
 あれって定説ではジョンの子供の頃のトラウマ(母と死別し、父は蒸発)を歌にしたものとなってて、まあ大筋ではそうだと思うんだけど、ただそれだけの曲では多分ないんだよね。
 つうのは、1番では母へ、2番目では父へ「自分のものになってくれなかった」思いをぶつけた歌詞になってるんだけど、3番では語りかける対象が(恐らく自分の)子供に変わるわけ。
 そこではまずこう歌われるんだ。「CHILDREN, DON'T DO WHAT I HAVE DONE」(子供たち、俺がやってきたようなことはするな)。
 つまり、両親に対し満たされない思いを抱えた子供の叫び、ではなくて、そういう思いを抱えつつ大人になり、父親となった男が「自分みたいになるなよ」と子供に伝える所が最後に来る構造になってるわけよ。「大人が子供のために歌う歌」だと思うんだ、本当は。
 これは私の勘だけど、ただ子供時代のトラウマを叫んだだけじゃ、あんな感動的な曲にはなってなかったと思う。最後に大人になって子供と向き合う視点があるから、ぐっと来るんだ、多分。
 で、私は別に両親に対してトラウマとかはないんだけど、この「マザー」みたいな感じで若者に何か言えたら悪くないんじゃないかなと思っている。
 すなわち「俺がやってきたようなことはするなよ」。
 まあ、余計なお世話なんだろうけど(笑)。