そして俺は途方に暮れた(笑)。

 最近、ヒマを見つけては古いヴィデオテープを処分している。
 2004年くらいまで我が家ではテレビ番組の録画をヴィデオで行ってきたのだが、さすがにもう引っ張り出しては観ないし、デッキ自体もあとどれ位使い物になるのか分からないので、機材がまともに動いているうちに保存しておきたい分をブルーレイにダビングしておこうと思ったのだ。
 と言うとあたかも自分が発案したかのように聞こえるが、何の事はない、ここ数年いわゆる「断捨離」にハマっている家人に勧告(事実上の強要:笑)を受けたのである。

 90年代に録った分は以前殆どを捨ててしまっていたので、そう大した事はないだろうと高を括っていたのだが、開封してみて愕然とする。
 これはめんどくさいわ。
 テープの本数はまあ、大した事はない。のだが、(ありがちな事だが)1本のテープにジャンルも長さもバラバラなコンテンツがランダムに収められている上に、インデックスが結構不正確(重ね録りとかしてるせいですね)。なのでまずは中身を確認してコンテンツをリストアップして、残すものをジャンル別に選定する所から始めざるを得なかった。
 またジャンルが多いんだ。音楽もの、映画、『刑事コロンボ』『名探偵ポアロ』といった海外ドラマ、ドキュメンタリー(これだけでも歴史ものだの文芸・アートものだの福祉関係だの分けようと思えば更なる細分化も可能)に『NHKアーカイブス』の傑作選、果てはペット番組まで(笑)。節操がなさ過ぎる上に、大概の場合は録画時に観た後に二度と観る事のなかったものばかりだ。
 そうなのだ。今リアルタイムでHDDやDVDに録画している番組にしてもそうだが、ほとんどのコンテンツは二度観する事なんて絶対にないのである。なのに観たい番組がかぶっているとか、深夜枠なので観れないとかを除いても、いまだにかなりの数の番組を録画して媒体に保存してしまう俺って一体なんなんだろう。しかも10年間一回も観返そうとしなかったものまでデジタル保存を企てるなんて!

 大袈裟に言えば、これって「記録」という行為を覚えた瞬間から人間についてまわる業のようなものかもしれない。それこそラスコーに狩りの壁画を描いた昔に始まって、「過去にあって、時の流れに沿って消え去ってしまうものをこの手元に何とか留めておきたい」という衝動は良くも悪くも、人類を人類たらしめているものの一つではあるのだろう。ただいにしえと違うのは、コンテンツもメディアもあまりにも多種&多様になってしまったせいで、「保存する内容」よりも「保存する事自体」が目的となり快楽になっている所はあるかもしれない。
 しかしそのように一人ごちた所で、目の前のヴィデオの山に途方に暮れる現実は何も変わりゃせんのだよ。
 仕方がないので、出来るだけ残すものは絞ってダビングするしかない。そしてそうしてもヴィデオはなかなか減らない。残さない奴までつい観ちゃうから(笑)。

=付記=
 10年以上前のコンテンツを集中的に観ていると発見する事もある。意外&面白かったのが、CMに関しては10年位前のものは今と比べてさほど古さや違和感を感じさせない事。これは当時のCMが斬新だったとかいう事ではなくて、多分CMの世界がここ10年ほとんど進化を遂げてないからではないかと思われる。確かに不況&テレビのステイタスの低下で、企業は昔ほどテレビCMに力を入れてないだろうからなあ。