TARJEELING ニューアルバム「Daily Colony News」発売記念連載「架空インタビュー “Talking ‘bout D.C.N.”」第4回「(ほぼ)全曲解説“カミナリマチ”」

 みなさんこんにちは、聡文三です。
 自録りインタビュー“Talking ‘bout D.C.N.”、今回はアルバムの3トラック目、「カミナリマチ」を解説します。
 この曲は昨年の夏先行してSOUNDCLOUDにアップしていますので、まずはそれをお聞きください。

カミナリマチ/TARJEELING

―で、次の「カミナリマチ」ですが、「ラジオゾンデ」とは打って変わって、マイナーキーのギターポップというか、下手すれば古のフォークソングすら連想しかねない曲調になっています。それこそ昔のソロ名義で活動していた頃から知っているリスナーにとっては、「あの頃の聡文三が帰ってきた!」と感じる内容になっていると思いますが、いかがですか。

聡:いや、それは違う。確かにこういう、アコースティックギターをメインに据えたメロディックな曲をやるのは久しぶりだしTARJEELINGでは初めてと言っていいくらいだけど、この曲はあの時代には絶対に書けなかったものだと思っていますから。

―逆に昔のような曲も今は書けない?

聡;技術的には…そうね、やってやれないことはない(笑)。でもポップ職人タイプのソングライターならともかく、自分みたいなのがそういう事をやっても、あまり意味がない。たまに昔の私を知っている方から「“Public Servant Years”(註:2000年に聡文三名義でリリースされたアルバム。それ以前の活動の集大成的な作品で、当時のコアファンからは高い評価を得た)大好きです。またああいうのやってくださいよ!」なんて言われる事があるんですが、で、大変そういう声はありがたいと思ってるんですが、自分としてはやはり、今の曲の方がよいと思っています。

―歌詞に関してお尋ねします。1番、2番、3番でそれぞれ避暑地の老人ホーム、遊技場の解体現場、国道沿いのペットショップで交わされる会話を描写していますが、こういう会話を実際に聴いたりしたのでしょうか。

聡:この会話の内容そのまんま、というのはないですね。たとえば遊技場のシーンなんかは、昔派遣の現場とかで(笑)、一緒に仕事をした人が外国人労働者の悪口を言ってたのを思い出して書いたものですが、会話の内容は想像によるものです。それこそネット上で散見される愚かな言説や、本を読んで知った事などをミックスして創作しました。

―登場人物に対する視点については、結構皮肉を利かせているように思えますが。

聡:個人的には、3番が一番辛辣だと思ってるんですよ。最後の落とし方が、割と残酷だなと。それ以外のものに関しても、まああまり出てくる人に共感してる、というのはないですね。

―真ん中のパートで「美しい言葉にはいつでも事欠かない」というフレーズがあります。言葉自体もそうなんですが、昨年Soundcloudでリリースした際のキャッチコピーに「滅びゆく国ニッポンへ、怒りを込めて」とあった事もあり、個人的にはどうしてもあの安倍首相の「美しい国」という言葉との関連を連想してしまいます。安倍政権成立後、いろんな動きが起こっていますし、今も安保法制が国会で議論の的になっていますが(註:このインタヴューは安保法制の強行採決前に収録された)、この曲と一連の流れ、また安倍首相の言葉自体についてどの程度関連があるのでしょうか。

聡:政治家が自分の政策を語る時に美辞麗句を使う事は何も安倍首相に限った事ではないので、そういう意味では「美しい国」との直接の関連性はありません。ただ、書いた時期は確かに安倍政権成立の頃ではあります。その状況が書かせたという事はありますね。…それにしても、安倍政権については、政策自体もひどいのですが、それを語る言葉の空疎さ、薄っぺらさの方がより恐ろしいと思いますね。だからどちらかと言うと、ああした言葉を良してしてしまうこの国の空気というのは、いったい何なのか?という疑問があのフレーズを書かせたのかもしれません。

―必ずしも良しとしてるわけじゃないと思いますけどね。

聡:でも別におかしいとも言わないわけでしょう。特定秘密保護法を説明する際のフリップのひどさとか、あんな事をされたら政策の是非以前に「バカにすんな!そんな説明しかできないのか!!」って思うのが当たり前だと思うんです。ああいうのに付き合ってあげている事自体が、俺に言わせりゃ(安倍政権の政策に)加担してる事と一緒ですよ。…だから、あそこに出てくる色々な人物というのは、そういう「色々意見はあるくせに黙認することによって加担している人たち」の例みたいなものを示したのかもしれない、後付けですけど(笑)。

―後付けなんですか(笑)。

聡:そう!僕がここで喋ってる事なんて、基本的には後付けですよ。書いてる最中にはそこまで論理立てて作るわけないんだから(笑)。
(続く)

カミナリマチ

「この世界はなんともはや くたびれはてとるねえ」
「その理由はなんですかな?」「わしらがせいかもしれんねえ…」
平和な夏の午後 そんな会話を聞いた
避暑地の老人ホームで お尻を洗いながら

「あの外国に何もかもが食い荒らされてしまうねえ」
「裏で手引きをしてるのはあの男かもしれんねえ」
蒸し暑い夏の午後 そんな会話を聞いた
遊技場の解体現場で にぎりめし食べながら

美しい言葉にはいつでも事欠かない
ぎこちない笑みを浮かべ黙る
空しさで見上げた 雷待ちの空
季節が移るような 変わり目

「この子の未来のためなら どんな事でもできるねえ」
「それでもし裏切られたら 死んでしまうかもしれんねえ」
雨あがり 夏の午後 そんな会話を聞いた
国道沿いのペットショップで レジの列待ちながら

この世界はなんともはや…


次回は「カインの息子」について解説します。

=TARJEELING 講演情報!=
日時:7/24(金)20:30開講
会場:cafe and bar gigi   
料金:投げ銭制(要オーダー)
出演:TARJEELING/森 真人(名古屋)/溝野ボウフラ/フランシーヌ
どちらもご予約、お問い合わせはメッセージをどうぞ!!メール、twittermixiいずれからでもOKです!!