みなさんこんにちは、聡文三です。
自録りインタビュー“Talking ‘bout D.C.N.”、第5回はアルバムの４トラック目、「カインの息子」について語ります。
―「カインの息子」は割と最初の方にできた曲だと聞いたんですけど。
聡：時期で言ったら前のアルバム「TWILIGHT HOPE」リリース前の曲だと思います。その頃はまだ今回のアルバムの方向性が固まっていない、というか次の事なんかまだ考える余裕もない（笑）時期だったので、いざ録音して曲順を考える際に、今回のテーマに合ってるかどうかを考え、除こうかと一瞬迷いました。ただ、今となっては入れてよかったと思っています。
―この主人公っていわゆる銀行強盗とかなんですか？
聡：まあ、強盗というか、ならず者ですよね。そのならず者の視点から見た言葉がヴァースの歌詞で、サビの歌詞が連中について行ってしまう少年の視点からの言葉、というわけです。
悪漢が金を脅し取る現場に自分の居場所がない少年が居合せ、好奇心が手伝ってヒョコヒョコついて行ってしまう。連中に疎まれながらも結局一緒に逃避行を続けるわけですが、一行が困難に出遭った際に少年が一回だけ奇跡的な事を起こして、連中を助ける。おそらくそれっきり少年も奇跡を起こすことはできないし、悪漢もいずれは捕まるんでしょうけど、その一回こっきりの奇跡のために存在する人生というのもアリなんじゃないか、その体験だけを胸にしても残りの人生生きていけることもあるんじゃないか、そう思ってこの歌詞を書きました。
―でも何で「カインの息子」なんですか？
聡：それは神のみぞ知る（笑）。…っていうか、最後の最後に「カインの息子って誰だ？」と歌ってますけど、「カインの息子」なんて意味ありげな言葉を散々使っておきながら、結局語り手にもよく分かっていない、というオチにすると面白いかな、と思って使ったんですけどね（笑）。巷にはいかにも意味深な言葉を使った歌があふれてて、よく「この歌詞の世界観が」なんて取沙汰されますけど、本当にちゃんとした意図があって使ってんの？という皮肉も、実は込めています。
―曲調はめずらしく三拍子ですけど、今回収録のもう一つの三拍子の曲「亜偏屈」とはサウンドが全く異なりますね。非常に太いギターとビートが強調されたユニークなアレンジで。
聡：アメリカにSecret Machinesというバンドがいて、彼らのファーストアルバムが好きで。70年代のハードロックなんかを彷彿とさせるラウドなドラムビートにニューウェイヴ以降のシンセサウンドをミックスさせたアイディアが面白いなと思ってたので、それをカッパらおうとして、まあ失敗して（笑）、ああいう音になったのですが、でも結果オーライという気も（笑）。
―TARJEELINGはビートに関してはずっと打ち込みでやってきたわけですが、やはり同時代の打ち込みやシンセを使ったサウンドなんかは気になるものですか。
聡：まあ気になるっつても、金もないし機材も古いから、そのまま真似なんてやれるべくもないんですが（笑）。どっちかって言うと、「今の時代のサウンドをガンガン取り込んでいこう！」っていうより「鋭いギターサウンドもメロディックな歌も打ち込みのビートも好き、じゃあその反発しあう要素をどうしたら一つにできるんだろう？」という所から出発していますから、そういう意味で先達の仕事というのは多少気になりますね。ただ今流行ってるEDMとかを真似してみようという気には全くなれない。あんなライザップのCMでかかってるような音楽をやろうとは思わない（笑）。
（続く）
カインの息子
作詞、作曲：聡文三
両手を挙げて 頭に乗せろ 言うとおりにしないか
ちょっとでもおかしなマネをしたら こいつが火を吹くぜ
カインの息子は見ていた
有り金全部袋に詰めて 俺の前に置け
今から百まで数える間 身動き一つするな
カインの息子は見ていた
行くあても 未練もないから 目の前のあなたを 救世主に決めた
妙な事になっちまった 何だ？ あのガキは
坊主、死にたくなかったら、帰って、クソして、寝ろ！！
カインの息子は見ていた
霧まで出てきた どうしようもねぇな また同じ道に出た
あっちの方だって、本当か！？ 嘘だったらお前も死ぬぞ
カインの息子は見ていた
一度だけ 奇跡を起こした そのためだけの 存在でもいいさ
お前のおかげで助かった だけど、ここで降りろ
こんなハモニカが欲しいのか？ だったらくれてやるよ
カインの息子は見ていた
で、「カインの息子」って誰さ？
次回は「TELL ME（“商工会議所”におけるフリードリヒ・エンゲルス）」についてお話しします。
＝TARJEELING 次回講演 明日です！！＝
日時：7/24（金）20：30開講
料金：投げ銭制（要オーダー）
出演：TARJEELING/森 真人(名古屋)/溝野ボウフラ/フランシーヌ
