幸福な週末。

・2/18(金)
 さんざんtwitterで(「脳内iPOD」のみという禁を犯して)つぶやいたとおり、この日の深夜は高橋源一郎の「午前0時の小説ラジオ」 http://twitter.com/takgengen を初めてリアルタイム観戦。
 しかもこの日は「ほぼ日」とのコラボでU-STREAMの動画中継つき。
 動画、といっても高橋さんが「ほぼ日」のスタジオで一人PCに向かって文字を入力していくだけなので、見ていて「盛り上がる」絵面ではないのだけれど、
 しん、としたスタジオ内に響くキーボードの音(時々飲み物を啜る音)と相まって、独特の緊張感と温かみをかもし出していて、いい。
 放たれる言葉の数々は言わずもがなだろう。詳しくはログを参照してほしい。視聴者のチャットを見ていると、最初のうちは雑談風なものが多かったのだが、「その10」くらいから途端にみんな黙り込み、しばらくしてから「すごい!」「涙が出ます」「日本文学史が変わった瞬間!」「この場に立ち会えてよかった」みたいな感想がドーッと上がり始めたのがとても印象的だった(少数だが、不満足とする人たちもいた。どの方もあまり詳しく語ってないけれど、個人的にはそちらの意見も是非聞いてみたい)。
 twitterでも同じ趣旨でちょっと書いたけど、もう一度言い直させて貰おう。生で歌ったり、演奏したり、しゃべったりする事、ただそれを行う事だけでは「ライヴ」にも何にもならない。こういうのを「ライヴ」というのだ。本当は。
 
・2/19(土)
 午後より、福岡アジア美術館で行われている「萩尾望都原画展」http://www.hagiomoto-gengaten.com/に赴く。
 萩尾望都と言えば、少女マンガ史、というより日本のマンガ史における偉人である。
 個人的にも、マンガ家という括りの中では、影響を受けた人物3人のうちに入る。
 故になんでこれを見逃せようか。「ゴッホ展」は見逃したが(苦笑)、これは見逃すわけにはいかない。
 いやすごかった。何がすごいって展示されている原画の量。
 既にキャリア40年(!)を超えていまだ現役、の人なので当然仕事量も膨大なのだが、デビュー作(!!)「ルルとミミ」の生原から始まって全キャリアから満遍なく、勿体ぶらずにふんだんに展示されている。
 傑作と名高い「半神」なんて全ページ(16ページ)展示である。鼻血が出そうだ。
 かなり近寄ってペンや色のタッチなどを確認できるのもいいし、年代によっての絵柄の変化も楽しめる(僕の見た感じでは、「百億の昼と千億の夜」が連載される直前の'75~6年頃がターニングポイントではないかと)。
 改めて思うのは、萩尾望都の作家性の高さとその先進性だ。
 例えばデビュー2年目の作品「ビアンカ」などを見ると、少女マンガというジャンル自体がまだ未分化だった時代に、どうしてここまで文学性の高いテーマの物語を書けたんだろうと思ってしまう。
 デビュー2年目って言やあねえ、通常ならその当時の流行りの焼き直しみたいな漫画を、ポツポツ描かせてもらってるような時期じゃないですか。
 まあ萩尾さんも作品の量で言えばこの当時は大した事ないんだけれど、質というか「志」で言えばもうこの時点でかなりのものが出来ているんだよなあ。
 2時間半ほどガッツリ見て、とても幸福な気持ちになって会場を出た。
 萩尾望都や少女マンガのファンのみならず、「志」のある表現全般に関心のある人は全て見ることをお奨めする。そしてあなたがもしこの人の作品を知らないでいるなら、この原画展は今年最大の収穫の一つになるはずだ。
 
・2/20(日)
 本日で、ミキシングの全行程を終了する。
 もう一度言う。
 本日で、ミキシング、全て、終わり!!!
 いや~、長かった。辛かった。終わんないかと思った。
 でも、終わったのだ。
 あとはマスタリングを残すのみ(純粋に「音」だけの話で言えば)。
 夜は、フィギュアスケート4大陸選手権をTV観戦。
 前日も観た際に思ったが、一時期の悲惨な状態を考えると、安藤選手は本当に、よくぞここまで立ち直ったものだと思う。
 いや立ち直ったどころか、4回転で騒がれていた頃を完全に、遥かに凌駕していて、素晴らしすぎる。フリーなんて「音楽に合わせて滑る」んじゃなくて、「滑りから音楽が生まれてくる」みたいであった。
 浅田選手も大分良くなってきたし、世界選手権が楽しみである。
 しかしこんなに幸福な思いを立て続けに味わえる週末というのも珍しい。これで運を使い果たせなければ良いが(笑)。