ライヴ観戦記~2010年11月20日 「谷川俊太郎 詩の朗読と音楽 武満徹をうたう」@都久志会館

 昨日11/20(土)、都久志会館にて行われたブックオカhttp://www.bookuoka.com/のイヴェント「谷川俊太郎 詩の朗読と音楽 武満徹をうたう」に行ってきました。
 まず最初にお断りというか言い訳ですが、私谷川さんも武満さんも勿論作品はいくつか知ってますけど、どちらの熱心なファンというわけでもないです。
 じゃあ何で行ったの?というと、「今見逃したら二度と谷川俊太郎を見れるかどうか分からんから」というのに尽きます(笑)。メチャメチャ失礼な動機ですが。
 実はこれ前フリがあって、今年の春先に谷川さん来福してるんですが、その時は見逃してるんですね。当日何とかなるかと思っていったらとっくに当日券完売してて。
 なもんだから今回は再来福を知った時点で速攻予約を入れたというわけです。
 
 当然ですが、私が日頃行ったりやったりするライヴなどとは雰囲気も客層も全く違います。当然とはいえ年齢層が高め(でも結構若い子もいました。ただ若い人は殆ど女子)で、いかにも文化・教養系が好きそ~な感じというか。あと開場までの待ちの間に持参した本を読んでいる人の率が高かった(笑)。
 こういう場所に、破れたブラックジーンズと真っ赤なシャツで髪ブッ立てて来てはやっぱりいけませんね。俺の事だけど(笑)。
 
 イヴェントは二部構成になってて、第一部はフルート奏者、岩佐和弘さんとギタリスト、鈴木大介さんによる武満徹作品の演奏。
 この時はどっちかというと「現代音楽」寄りの音楽を中心に演奏されたので、耳が俗な(笑)私としてはちょっと退屈な瞬間もないではなかったけど、概ね満足。
 特に鈴木さんのギターは凄かった。テクニックもさることながら、音そのものの濃密さに酔う。音の「旨さ」に耳が喜んでいるの分かる。
 谷川御大は第一部でも二度ほど合間に短い朗読を披露。「音楽は思い出にならない」という一節がやけに心に染みる。この所色々あったからな…。
 
 15分ほど休憩を挟み、第二部は前述の鈴木氏にフォーク界の大御所、小室等さん(ギター&ヴォーカル)と谷川さんの息子さん、賢作さん(ピアノ)と御大とでライヴ&トーク
 小室さんというと、「正調・日本のフォーク」みたいなイメージがあって、遠藤賢治や泉谷しげるといった暴れん坊将軍な(笑)人の方を好む私は今まで敬遠気味だったのですが、今回初めてちゃんと聴いたらえらい良かった。
 前述の二人のような「アクの強さ」みたいなのは確かに希薄だし、語り口やパーソナリティも基本的に陽性で善良なんだけど、その善良さを嘘くさくは全く感じさせない歌の説得力と深みが半端ない。暖かいけど、少しもぬるくないのだ。
 いやあ、ちょっとナメてました。ホント申し訳ない。っていったい俺は誰に謝ってるんだ。
 
 さて谷川御大ですが、「武満徹をうたう」とありますが殆ど歌ってません(笑)。歌ってたのは主に小室さんです。
 何してたかというと、要所要所で詩の朗読をするのと音楽の合間のトークで武満さんとの思い出を他のメンバーと談笑し、時に談笑しすぎて進行に支障をきたす(←マジ。おかげで予定演奏曲目が1曲飛んだ)くらいでしょうか(笑)。
 詩の朗読も、訥々とした温かみのある口調ではあるけど特にスペシャルな技や説得力があるというわけでもなく、あっさりとしたものでした。
 じゃあ金返せという気分になったかというとそういうもんでもなかったですね。もう少し前に出て欲しい気はしましたけど、「これはこれで悪くねえなあ」みたいな。
 ただ、谷川さんの存在感って独特ですね。オーラがあるというのともちょっと違うけど、ただそこにいて普通の事喋っている時でも何か「異形感」があるんです。こういう言い方していいのか分かりませんが、人間の中に一人宇宙人が紛れ込んでいるような感じ。他のメンバーと並んでいると特にそう感じました。
 
 アンコール。1曲だけ、詞も武満徹のペンによる「小さな空」をメンバー全員で演奏。
 これが、非常に素晴らしかったです。これ1曲のために4500円払ってもいいという位。
 1番の歌詞を小室さん、2番を賢作さん、3番を谷川さんが歌い、3番の谷川御大は声も他の2人に比べ小さいし上手くないんだけど、一番説得力があった気がします。
 最後の最後にいいもん見せてくれたやんけ。そうひとりごち、会場を後にしたのでした。
 
 それにしても、ブックオカはいい感じのイヴェントをやってくれますね。ミュージックシティ何ちゃらよりもずっと面白いよ。