週末日記

・11/25(金)
 終業後、東京公演のための交通チケットを入手する。
 今回は新幹線で行く事とした。
 ひょっとしたら航空機の方が安いのかもしれないが、楽器を客席に持ち込めないので念のために列車を選んだのだ。
 なんとも世知辛い世の中になったものだが、まあ仕方がない。それに列車の旅は嫌いじゃないし。

 その後は、今月で閉館するソラリアシネマへ。
 福岡の誇る天才&異能音楽家倉地久美夫さんのドキュメンタリィ映画「庭にお願い」 の凱旋上映会である。
 凱旋、というのは去年の10月に一度だけ福岡で公開されたのだが、その後全国を巡回して好評を博し、再度福岡での上映となったからである。
 おまけに今回は終演後、プロデューサーの舞台あいさつ&倉地さんのミニライヴ付きだ。
 よって会場は大盛況だった。

 先日観たジョージの映画ではないが、この映画も作り自体は至って正攻法で、本人及び交流のある様々な人々へのインタヴュウと、ライヴ映像というもの。
 面白いのは、インタヴュウではそれこそ日本の「真の意味でのオルタナティヴ音楽シーン」の裏番長的な人々が次々に登場して倉地さんの音楽に賛辞を惜しまないのだが、じゃ結局倉地さんの音楽の魅力や本質って何?という事に対して誰も明確な答えを持てない所だ。
 いや、部分部分では分かる。例えば、若い頃に日本歌曲の老先生から指導を受けていたというエピソードや、琴の奏法にヒントを得て改造した複数のカポタスト(ギターのネックに嵌めて音の高さを変える道具。普通1つしか使わない)を違う場所に嵌める事によってオリジナルのチューニングを作っている、なんて話には「確かに言われてみれば」と思わせるものがある。
 だけど、じゃなんでそれらの要素がああいう風に混ざってあんな音楽になるのか、どうしてそんな発想になるのか、という事になると、最後の所はやっぱり分からないのだ(だって普通カポを何個も一遍にはめようとなんて思いませんよ。俺なんて凡人だから、この映画観て初めてその手がある事に気付いたもん)。そういう意味ではコピーの「天才だから、しょうがない。」というのは正にピッタリである。

 そういう感じでキツネにつままれたような感触が残る映画なのだが、興味深かったのは、若い頃のエピソードだ。
 倉地さんは80年代末から東京で長く音楽活動をされていたのだが、ある時期に帰郷して地元の企業に就職、以降社会人として働く傍ら音楽活動を続けていかれる事になる。
 東京時代を知る人が久し振りに倉地さんと再会して驚いたそうだ。普通は就職して堅気になるとアウトサイダーだった人もただの人になっちゃうけど、倉地さんは更にパワーアップしていたからだと言う。
 確かに、東京時代の映像と現在を見比べるとその事がまざまざと分かる。技量的にレヴェルアップしているのは勿論だが、ただ上手くなったのではなく、倉地さんワールドを聴き手に見せる際の解像度がケタ2つくらい上がってる感がある。
 そういう意味では、帰郷後初めて、倉地久美夫倉地久美夫になったのかもしれない。
 先ほどの方は「堅気になったのにレヴェルアップしてた」と語ってたが、私は逆なんじゃないかなという気がした。普通の社会人として生活を送るという事、正にその事が、倉地さんが芸術家として一段上に上るのに必要な事だったんじゃないか、と思うのだ。
 その根拠は?と言われると、これもまた分かんないんだけどね(笑)。


・11/26(土)
 例によって練習。
 東京公演が近付いてきたが、年内にはもう1本福岡でライヴがある。

=東京公演詳細=
2011年12月7日(水)18:30開場 19:00開演
料金:前売1500円/当日1800円(+1drink order)
出演:TARJEELING STANDALONE MODE/ENOLAGAY/PERFECT SPORTS/RAGZOO
※TARJEELING STANDALONE MODEは2番目の出演です(19:40頃)。


=福岡公演詳細=
2011年12月11日(日)19:00開場 19:30開演
薬院Utero 「this is what you want 43」
料金:1500円(+1drink order)
出演:TARJEELING STANDALONE MODE/warsawpact/THE TORTOISE CITY BAND ELECTRO(北九州)/23℃
※TARJEELING STANDALONE MODEは3番目の出演です(20:50頃)。

 どちらもチケットのご予約・お問合せはtagahillrecords@yahoo.co.jpまで!


 実はこの度の福岡公演は2011年最後のライヴのみならず、私の30代最後のライヴとなる(笑)。
 TARJEELINGを立ち上げたのが2001年の2月。それから10年。
 まさか30代の終わりを、こういう形で迎えるとは思わなかったなあ。
 ただ20代よりは実りが多かった…と思いたい。何せ20代は収穫という意味では何もないに等しかったからね。あの頃は10年かけて曲を書く練習をしていたようなものだ、今になってみると。
 まあ他の人と較べたらその実りも微々たるものだが。でも行きたい場所には近付いている気がするよ。


・11/27(日)
 午後から大名のボーダーラインレコーズへ行き、「TWILIGHT HOPE」を納品した。
 このご時勢なので、インディーズの音源を置かせて下さる店というのもめっきり減ってしまった。
 そんな中、こうしたお店の存在は本当にありがたい。
 皆さんも見かけたら手にとってみてね。

 昨夜の大阪市長・府知事選の事はさんざんtwitter に書いたのでもういいだろう。
 確かによその土地なので関係ないっち言やあ関係ないんだけどね。でも大阪の事例が特殊とは思わない。
 ああした事は今後、どこでも起こりうると思っているし、起こるだろう。私たちの世代は、かなりの確率で私たちの社会に止めを刺す中心的な担い手となるだろう。
 ただこれだけは繰り返し、言い続ける。
 「俺は、気分としてのラジカリズムには与さない。」
 「何をしてもいいが、うちの猫のしっぽだけは踏むな。」