ブックオカ活動休止によせて

 いささか旧聞になりますが、福岡で毎年行われている本のイヴェント「ブックオカhttp://bookuoka.com/が、今年の10周年を区切りに来年はお休みするというアナウンスが正式にありました。

 とても残念な事です。

 ブックオカは、福岡の書店員さん有志を中心に2006年から開催されてきた本のイヴェント。
 中でも一番の呼び物は、文化の日前後にけやき通りで行われてきた「一箱古本市」なのですが、その活動内容はそれにとどまりません。
 角田光代さんや西加奈子さんといった、いわゆる「人気作家」のトークイイヴェントがあり、哲学者や文学者を招いてのガチでアカデミックな講演があり、デザイナーさんたちとコラボした表紙の展覧会があり、子供を対象にした読み聞かせイヴェントがあり、書店員や読書愛好家の交流会がありました(今過去のブックオカの冊子やフライヤー見ながら書いてるんですが、それ以外にもホントに色々やってるんですよね)。
 中でも震災の年、2011年に行われた、哲学者・佐々木中さんの講演会は(と見てきた風な口をきいてすみませんが未見です。佐々木さんの本で後日講演の内容を知りました)、私が知る限りではあの震災と原発事故について論じた言葉で最も見識のあるものが語られた講演であり、このイヴェントが生み出した最良の果実であったと思っています。

 かように多岐にわたった催しが行われてきたのですが、ブックオカというイヴェントが常に発信してきたメッセージは、「本の世界は楽しいよ。みんなも遊びにおいで」といったような、ごくごくシンプルなものだったと思います。
 だからこそ、人気作家でミーハー的に(?)盛り上がるのも、ハードルの高い知的刺激に挑戦するのも、古書や装丁にフェティッシュな楽しみを見つけるのも、愛好家同士で盛り上がるのも、みんなアリだよ、それだけ本の世界は深くて広いよ、その楽しみが君を待っているよ、という事だったのでしょう。
 もう一つ、イヴェントの主催者は書店員さんなので、当然本が売れるようになる助けにたい、というビジネス的な思惑ももちろんあったとは思うのですが、あくまでいち本好きの立場から出発しているんだ、という事がとても伝わってきました。それは、毎年開催時に発行される冊子や、恒例企画「書店員激オシ文庫フェア」での選定者のコメントを見れば本が好きな人間ならすぐに分かる事と思います。
 時々「この人こんな売れそうにない本こんなに熱く推してどうするんだろう…」といった事例もありましたが(笑)、そうした勇み足も含めて、まず本の世界への愛ありき、を感じさせる点をとても好ましく、意気に感じていました。

 ただ、私自身は、「一箱古本市」はブックオカの存在を知ってから毎年通っていましたが、その他のイヴェントに関してはなかなか行く機会が取れず(というか有体には手元不如意の事態でいけないことが多く)、今となっては非常に後悔している&申し訳なく思っている事を白状しておきます。
 誠に面目ない&申し訳ないです。

 最後に。
 長きにわたって福岡の本好きに楽しみを下さった事、最後までブレずに「まず本の世界への愛ありき」のイヴェントを貫かれた事に対し、ブックオカスタッフの皆さんへ深い感謝と敬意を。
 ありがとうございました&お疲れ様でした。
 来年お休みなのは誠に残念ですが、復活を楽しみにしています。