洋服閑話

 先週末、少し遅れて誕生日プレゼントの買い物に家人と出かけた。
 今回はユニクロ無印良品で、フリース上下1着、スウェット上下1着、パーカー、Tシャツなどなどを購入。
 思いっきり普段使い用の衣料ばかりである。
 家人の名誉の為に言っておくと、このセレクトは私自身のリクエストによるものだ。
 こういう機会でもないと、洋服というものを買わないのである。
 最近はまだマシになったが、以前は20年近く着続けているシャツ(当然衿、袖をはじめあらゆる箇所にほつれや継当てを確認できる)も何点かあった。
 基本的に、衣料というものに金を使いたくないのだ。書籍やCDならいいのだけど(笑)。
 先日読んだ英国の紳士階級のライフスタイルを解説した本によると、かの国のジェントルメンも普段からシャーロック・ホームズの如き格好をしているわけではなく、それこそほつれや継宛がそこかしこにあるセーターや、流行などというものをはるかに超越したジャケットなどを日頃は愛用しているらしい。
 それを読んだ時は「おお同志!つうか俺って紳士(笑)!」などと思ったものだが、よくよく読み進めてみると要するに最初の段階で質の高いものを購入しているので10年20年着てもさして支障がない(またイギリスの衣類は丈夫らしいのだ。古着屋も充実しているそう)、また日頃はああでもいざあらたまった席に呼ばれた時などは紳士たるものフォーマルをバッチリ着こなすものだ、との事だった。当然の事だが、所詮ステージが違うのである(笑)。

 そう言えばその日の朝観ていた情報番組で、「常日頃ロクな服を着ていない家族を一流(?)スタイリストが大変身させます!」という主旨の企画をやっていた。
 実はこの企画結構好きで(笑)よく観るのだが、そこに出ていた家族がちょっと毛色の変わった家族で。
 いや、服装センスは特に変わってないというか、この企画に出る他の家族同様ダサいのだが(笑)、変わっているのはその洋服の入手方法。
 基本的に洋服、買わないらしいのだ。
 どうするのかというと、特に子供服などは仲のいいご近所さんに年上の子供のいる家庭が多いので、お下がりをもらうんだそうだ。
 いや親はいいですよ。でも子供、それでいいのか?
 子供っつっても確か小学生高学年のお嬢さんだったと思うので、それなりに自分で選んだ服買ってオシャレしたいだろうにと思うのだが、観た感じでは別にその事に不満もない模様。
 家を見る限り別に貧乏でもない(つうか我が家よりはるかに裕福そう:笑)ので、経済的理由でそうしてるわけでもないようだ。
 この家族も単に、衣類に興味がないだけなのだろうか。いや、だったらこういう企画に応募してこないよな。

 ところでこの手の企画を観ててよく思うのだが、スタイリストさんがあてがった衣装の方が普段のダサい服よりも大抵の場合良くないような気がする。
 家族ものはそうでもないけど、一番失敗率が高いのが「農作業とか伝統工芸に従事してて、普段すんげえラフな格好しかしない若い女性をオシャレにしてあげましょう」というネタ。
 企画の最初の方でその娘さんが労働に従事している姿が出て来る。大抵の場合すっぴんで、作業しやすい格好しか着てないけど、ちっとも悪い印象はないんですよ。むしろノーメイクだと溌剌とした表情がよく分かって好感が持てるし、作業用の服というのはシンプルなものなので、地味ではありこそすれ特段おかしな事にはなっていない。
 ところがこれを「女らしい格好をさせてあげましょう!」なんつって、変にテカテカしたワンピースを着せられてヅラか生け花みたいな髪型にして厚塗りメイクを施すと、もうダメなのだ。ビフォーの半分ほども魅力的でないし、人によっては滑稽ですらある。
 「お前が言うな」とそこいら中から十字砲火が来そうだが、あの手のスタイリストは分かってねえなと思う。番組の主旨上、ある程度オシャレさせるのは仕方ないにせよ、あんなどこぞのファッション誌のモデルのバッタもんみたいな格好をさせてどうするつもりなのだ。その人が何によって輝いているのかをまるで理解していないとしか言いようがない。

 というわけで(どういうわけだ)、私は当分の間、衣類にお金を使う生活はしないだろうと思う(多分一生)。メンテナンスはもう少しマメにしようとは思うけどね。