レコーディングセッション、最終日。

 先週の土曜日、録音機材一式を担いでスタジオへ。
 去年から延々続いていた録音作業の最終日である。
 
 別に最初から最終日をこの日に決めていたわけではない。また、粗がないわけでもない(というか、客観的に見れば粗だらけ)。
 ただ、ずーっと録っては直し、録っては直しを繰り返した結果、もうこれ以上録り直しを繰り返しても良くはならないという結論に達したのだ。
 最終的にはSE等をちょこっと加えるかもしれないけど、実質的に「レコーディング」然とした作業はこれでおしまいである。
 
 この日の作業はヴォーカルの手直し。仮ミキシングした曲を聴いて、「どうしてもここだけは」という箇所だけ録り直す。
 大体歌は一番てこずる作業なんだけど、今回はいつになくスムースに終了。多分気分良く作業出来たせいだろう。一番メンタルが影響するパートなので。
 
 全行程が終わっても、スタジオの終了時間まで少し時間が余った。
 思えばほぼ丸2年、自宅とこのスタジオを往復して地道で孤独な作業を重ねてきた。
 録音している間中は、とにかくしんどいわめんどくさいわ誰も助けてくれないわで(笑)、とにかく早く終らせたくてしょうがなかったのだが(本当ですよ!)、いざ作業が終ってしまい、しばらくの間これをやらなくなるんだと思うと無性に切なくなってしまった。
 いや正味の話、「しばらくの間」と書いたけどこれが本当の意味で最後になるかもしれないのだ。
 そう考えたら、自分自身のためにお疲れさんの意味を込めて、歌を歌いたくなった。
 
 まだ録音機材を片付けていなかったので、ついでに録音もすることにした。発表するつもりのない、自分のためだけに録っておくトラックだ。
 スタジオにあったキーボードを弾きながら、あるカヴァー曲を歌う。勿論今思いついたので、歌詞なんかてんで憶えちゃいない、というかサビ以外はほとんどハミングである。当然キーボードも間違えまくる。
 でも、とても気持ちよく歌った。
 
 録り終えた後、一度だけプレイバックし、機材を片付ける。
 そして最後に、もう一度だけ周りにあるアンプ、スピーカー、ドラムセット、キーボード等等をぐるっと見回して、心の中でお礼を言い、スタジオを後にした。