「あまちゃん」と地元考

 日本国民のかなりの人がそうだと思うが、「あまちゃん」をこの頃よく観ている。
 基本的には愉快に笑いながら見ているし、どこが面白いのかを色々語る事も出来るのだが、今回は敢えてそこに踏み込まずに「地元」というお題で少々愉快でない文を(笑)書いてみたい。
 最初に断っておくが、途中で自分の話になります。大体俺の話はみんなそうだが(笑)。

 「あまちゃん」の主人公の女の子みたいに、地元も地元の人の事も大好き!と何のてらいもなく思える人は幸せだなと思う。何の皮肉もなしに。
 でもよく考えたらこの子は東京の生まれで、そこで引きこもりみたいになってるのが母の郷里で暮らしたら見事に変われました、ってな筋だったと思うので、厳密に言えば「生粋の地元の子」ってわけでもないよね。
 だから今後上京してアイドル目指して云々、という展開になるのは、うがった見方をすれば「本当の地元」へのリベンジという意味合いもあるのかもしれない。正直に言えば、東京編になったら面白さが半減するんじゃねぇかという気もするんだけど(地元勢ほど面白いキャラの脇役、揃いそうにないし)。
 もうちょっとだけ駄弁を弄すると、主人公の女の子と地元との関係は、今がいわば「蜜月」なんだけど、もしこのままずっと地元に残ると仮定したら、これから「イナカの地元」のイヤな所、めんどくさい所、息苦しい所等々に出会う事になる(何せ「途中出場」なのでその辺の事はまだ知らないわけです)。
 その時にどう向き合うのかを書いてくれたらいいなぁという気もするけど、勿論そんな事がこのドラマのテーマではないので(笑)、これは言ってもしょうがないな。

 で、我が身を振り返って考えるに、私は自分の地元には殆ど全くいい思い出がないし、基本的に地元への愛着というものも持っていない。
 もっとも今では地元よりも現在住んでいる福岡の方がいた時間が長くなっているが、福岡を地元と思っているわけでもまたない。勿論仲のいい人達も、愛着を持てる所も地元とは比べ物にならないくらいあるけど。
 ただ先ほども言ったけど、地元が好きで、そこの人たちと愛し愛されてずっと同じメンツで生きていく、というライフスタイルを私は尊重するし、それはそれでとても幸福な生き方だと思う。
 けれどもそれとこれとは話が別と言うか、じゃああんたも地元に対して愛情持ちなさいよと迫られるとそれは違うと思うし、むしろそういう風に愛情や敬意を強要されるような発想そのものが地元への自然な愛着を阻んでいくものだろう。

 というか、例えその土地がどんなにいい所でそこに住む人がみんな仲良しでも、私のような人間はある程度出て来てしまうものだと思う。
 で、どっちみちそういう奴は地元を捨てて出て行ってしまうので(苦笑)、残った人にとっては関係ないっち言やぁ関係ないのだけど、その事は少し念頭においてもらった方がいいかなあ、と思う(というか、願う、だな)。
 何もそういう奴にやさしくしろとか気を遣えとか、そういう事を言ってるわけじゃない。ただ、たとえ同じ風景を見て同じ人達の間で育ってきた者の中でも、自分にとって愛しくてしょうがないものが他の誰かにとっては呪うべき存在になってしまう事がありうる、という事を考慮において、自分の周りのものをもう一度見渡してみる、というやり方をたまには取ってみてはどうだろう。
 それはその人の地元への愛を褪せさせるものではなく、むしろタフにするものだと私は考えているのだが。