Virtual Interview with SOH BUNZOH about TARJEELING's Brand New Album "F1 Blues"(第10回)

2022年5月3日に発売されたTARJEELINGの新しいアルバム、「F1 Blues」。
一部ではキャリア最高傑作との声もある本作について語り尽くす連載企画、
「Virtual Interview with SOH BUNZOH about TARJEELING's Brand New Album "F1 Blues"」、
第10回はいよいよ佳境に入りトラック12「船出」とトラック13「THE ENDING THEME of THE VIRTUAL AUDIO PLAY "F1 Blues"」について語り倒しております。
どうぞ!!

前回の内容はこちら↓

tagahillrecords.hatenablog.com

TARJEELING 2022年ニューアルバム「F1 Blues」特集↓

tagahillrecords.hatenablog.com


失踪した友人の足取りを追う架空のロードムーヴィーのような体裁を取っている「F1 Blues」だが、終盤の「船出」はどこかその終着点のような印象を感じさせる。タイトルと曲の冒頭にあしらわれた波の音のSE(聡が実際に海岸で録音したもの。この録画中に同時進行で撮影した写真がアルバムのジャケットになったのは以前の回でお伝えしたとおり)から、その終着点は港のようだ。失踪した友人は港から旅立って行った、という解釈でいいのだろうか?
「さあ、それはどうでしょうね…。歌詞を見て頂ければわかると思いますが、この歌の中には船出をする者と見送る者が出てきて、主人公は後者の側の人間です。ここは滅びゆく場所で、自分はそれを見届けるかのように留まり、旅立つ人たちは外の世界に希望を見出すかのように決別していく。果たして失踪した男はそちらサイドの人間なのか?もちろん色んな解釈があっていいと思いますが、個人的には、彼がそちら側に行けた可能性は低いだろうと思っています」
ただ、最初のフレーズで「さようなら、Crazy World、さようなら、Idiot World」としていた歌詞が、最後では「こんにちは、~」と反転していますね。旅立つ人たちがまた戻って来るという事なのですか?
「いや、どちらかと言うと、こちら側に留まった人間の、狂った世界でそれでも生きるという決意を表現したものですね。つまり、狂って愚かしい世界ではあるけれど、その世界を作ってしまったのは我々なわけです。製造物責任じゃないけど(笑)、少なくともある程度の年齢がいった人間はそれを放棄するわけにはいかない。人によってはそれに耐えきれない者もいるかもしれないし、そんな場所でおめおめ生きながらえる事を嘲笑する人もいるでしょう。しかしそれでもなお、という気持ちが私の中にあります」
音楽的にはここしばらくの聡の曲にはなかったミディアムテンポのバラッドの体裁を取っている。音数を絞り込んだAメロ部分と、転調がなされストリングスやシンセ音、ピッコロなどがあしらわれた中間部分では歌唱法が全く異なっており、一瞬同一人物によるものとは気づかないほどだ。
「(中間部の)ハイキーで歌い通すやり方は、随分久しぶりの試みでした…。私が音楽を人前で演奏し始めた当初はよく使っていた歌唱法だったんです。当時はB-Flowerとかスピッツ、あとニール・ヤングのような音楽にとても影響を受けていて、共通点としてはみんな歌声が高いんですね(笑)。ただそれがどうも自分には合わないというか、自分が出したい歌声になってない気がしていて、もっと叫ぶような歌い方に変わっていきました。ただ今回の場合、このパートではとてもキレイなんだけどどっか嘘くささが嗅ぎ取れるような歌声にしたくて、こういうやり方ならそれが表現できるのではないかと思ってトライしました。…実はこのパートについては『技術的にはもっと巧く歌えたヴァージョン』があったのですけどそれを没にして、少し音程的には危うい方を採用したんです。それも、今回の狙いに則ったチョイスでした」
「船出」が再び現れる波のSEのエンディングでフェイドアウトした後、そのメランコリックな雰囲気をバッサリ断ち切るかの如くステディな8ビートに乗せて「THE ENDING THEME of THE VIRTUAL AUDIO PLAY "F1 Blues"」が始まる。これは基本的にインストゥルメンタルなのだが、途中で架空のラジオドラマ「F1 Blues」のスタッフロール(ただし、脚本も演出も音効もすべて聡文三名義。音楽だけTARJEELING名義となっている)がナレーションで読み上げられる。つまり、アルバム全体がラジオドラマ「F1 Blues」であり、この曲がそのエンディングである、という仕掛けなのだ。10代20代にかけて音楽と並行してラジオドラマの熱心なリスナーであった(一時期は毎週好きなドラマのトップ10ランキングを作るほど入れ込んでいたらしい)聡らしいとも言えるオマージュだ。
「あの頃ラジオドラマが好きな人なんて自分の周りにはほとんどいなかったんですがね」と苦笑しつつ聡は続ける。「もう今は熱心なリスナーではなくなってしまいましたが、あれをきっかけとして色んな作家や文筆家を知る事が出来ましたし、あと意外と朝ドラ感想を書くのにも役立っているかもしれない(笑)。私はテレビドラマの視聴経験はほとんどありませんが、放送劇の世界にどっぷりつかる事で脚本や演出の良し悪しなんかは何となく分かるようになりましたから。で、今回こういうエンディングにしたのは、アルバム全体、特に後半から結末にかけてがあまりにも陰鬱だったので、これは架空の放送劇なんだよと告げて、聴いてる人に少し楽になってほしかったから。だから曲調もああした、中学のアンサンブルクラブがBGM音楽を演奏しているみたいな(笑)軽い感じにしたんです」
(続く)

聡文三音楽活動30周年記念作品、
TARJEELING 6th Album 「F1 Blues」(品番:THCD-010)、
2022年5月3日発売!!!
全14トラック、2000円(税抜)。
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